門脈圧亢進症について
門脈圧亢進症の原因
食道静脈瘤
胃静脈瘤
食道静脈瘤の出血(破裂)に伴う変化
食道や胃の静脈瘤の内視鏡による治療
食道静脈瘤の治療 イラスト
食道静脈瘤 内視鏡的静脈瘤硬化療法 EIS
食道静脈瘤の内視鏡的治療 注入時ムービー
食道静脈瘤治療 結紮術 EVL
食道静脈瘤破裂のEVL(結紮術)による止血ムービー
食道静脈瘤の治療戦略
食道静脈瘤の治療戦略経過
胃静脈瘤の治療 B-RTO
胃静脈瘤のB-RTO ムービー
B-RTO前後 肝性脳症や肝不全の改善も
部分的脾動脈塞栓術
部分的脾動脈塞栓術の効果と今後の検討
部分的脾動脈塞栓術の脾臓ムービー

門脈圧亢進症について
肝硬変になってくると、肝臓へ流れ込む血管である、門脈の血流が、流れにくくなって圧がかかり、脇道ができてきます。これを門脈圧の亢進状態といいます。
写真の上は正常の肝臓の門脈が写っている血管造影の写真です。橙色の矢印に沿った血管が消化管からの血流を一気に肝臓の運んでくれる門脈です。
写真の下は、門脈圧が亢進した患者さんの門脈の写真です。肝臓へまっすぐ流れる血管の他に写真の右側に太くうねうねと発達した血管があります。この例では左胃静脈から食道周囲の静脈へと血流が逃げて行っている状態です。このような血管が何種類か有り、食道や胃に入りこむと静脈瘤を作ることになり治療が必要な状態となることがあります。
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門脈圧亢進症の原因
門脈圧亢進状態がどうやって起こってくるか、わかったようにスライドでは示していますが、これ以外にもいろんな因子が有ることが知られています。門脈の血流の状態は圧だけでも説明できないですし、食事の前後や寝てるときなども圧が変動していて、言ったり来たりすることもある血管でもあります。

大まかにはスライドに示すように、肝臓が硬くなったり血管の流れがスムーズでなくなる状態が理解しやすいので説明としては一番にあげています。そのつぎには、血流の増加ですが、これがなぜ起こってくるかは、難しい問題で、まだまだわからないことが多い病態です。起こった現象に対して同治療していくか、それが今の医学の限界なのだなあと感じる部分でもあります。
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食道静脈瘤
肝臓が硬くなってきて、門脈圧亢進状態に入ってくると、門脈の血流が食道側に増加して、食道静脈瘤を形成してくるパターンがあります。この写真は左が正常の食道で右が治療が必要となってきた時期の食道静脈瘤です。
食道静脈瘤が出てきた場合、出始めに急に悪くなるか違いますので3ヶ月以内に再チェックをして出血しやすい静脈瘤に変化していないかをチェックするようにしています。安定してくると、半年や1年に1回のチェックでも十分となってきますが、急速な悪化や静脈瘤の上に写真の右のような赤い色が出てくると、粘膜が薄くなって血が透けて見えてきている状態となり出血(破裂)しやすいくなってきますので、内視鏡的静脈瘤硬化療法などの治療が必要となってきます。

出血による、肝臓の負担が一気に増して肝不全となり命に関わることを防ぐことが治療の目的と言えます。
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胃静脈瘤
肝硬変などの門脈圧亢進状態で出現してくる静脈瘤にはいろいろあるのですが、この写真は胃にできてきた静脈瘤のものです。写真の左が正常の胃の頭側、右が胃静脈瘤の部分です。右の写真のさらに左側にもこもこした盛り上がった形の静脈瘤がわかるかと思います。黒い棒みたいにみえるのは、胃カメラの部分です。反転といって、胃カメラの先端を180度曲げることで食道と胃の境目を見上げてる写真です。

この部分にできる胃静脈瘤を特に孤立性胃穹窿部静脈瘤(こりつせいいきゅうりゅうぶじょうみゃくりゅう)といって出血(破裂)すると、大量になるため出血死が起こることがあり、命に関わる静脈瘤といわれていました。現在では、内視鏡的静脈瘤硬化療法や血管造影による治療(B-RTO)などにより、内科的な治療が可能な静脈瘤となっていますが、それ以前は手術しか対応できない、治療が困難な静脈瘤の一つでした。
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食道静脈瘤の出血(破裂)に伴う変化
このスライドは、左側は出血(破裂)状態のもので、血を見ると具合悪くなる方は、みない方がいいかもしれませんが、、、左の上が勢いよく出血している状態、これは、静脈瘤の中の血液の圧力が強かったり、血管が破れた穴が小さい場合に起こります。左下の破裂状態は、泉がわき出ているような出血の仕方で、圧が低かったり、穴が大きかったりする場合に起こります。どちらも胃カメラで観察したときに診断され、止血が必要となる状態です。

スライドの右側は出血がとまったときに起こる変化で、破裂したところにかさぶたが着いた状態で、その色が赤っぽいか白っぽいかで、赤色栓、白色栓と名前が変わっています。出血後このような印がある場合がほとんどなのですが、無い場合があり診断に苦労することがあります。
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食道や胃の静脈瘤の内視鏡による治療
食道静脈瘤の治療には、外科的治療と内科的治療があります。近年内視鏡による治療が発達し、外科的治療の数は減っています。しかし、内科的に治療できず外科的治療を選択する場合がないわけではありません。
当院では、内科的治療が主流となっています。その中でも内視鏡的治療がほとんどです。
スライドは、内視鏡的治療の主なものを並べたものです。

1-1の血管内注入法が胃カメラを通して針を静脈瘤内に硬化剤という薬を注入して、血管内に炎症を起こして血栓を作り静脈瘤が無くなってくると言う治療です。注入時に痛みを感じる方がいますが、胸のところのつまるような感じがある人が多いです。治療時間は20分前後です。この治療を週一回、もしくは、2週に一回行って、最終的に4回前後行うことでほぼ消失させることができるというものです、施設によってもやり方が違ったりするところがありますが、最終的には2-2のヒートプローブ(アルゴンプラズマ凝固法を使う施設が多くなってきている)による焼灼療法で地固めといって、小さい血管を消失させる治療を組み合わせて再発率を低下させています。

血管内注入法は、技術を習得するのに時間を要することから、最近はEVL(静脈瘤に輪ゴムをかけてしばって血流を停めて消失させる方法)が急速に普及しています。この治療は、薬液の注入法より血流の遮断される範囲が少ないため、静脈瘤の種類によっては不十分な治療となることがあり、再発しやすくなる欠点がありますが、簡便さと効果の出現が早いことから肝臓の予備能が低い場合にも十分治療が可能という利点があります。

CAというのは、瞬間接着剤を静脈瘤内に注入する方法で、胃静脈瘤に主に使用されます。血管内注入なのですが、血管内に入るとかたまり静脈瘤の血流を遮断するものです、固まった部分が後から、胃潰瘍になってでてくるのが特徴です。血管の中で固まるのが比較的早い場合や、うまく血管内に注入できない場合など難しいことがありこれも経験の積み重ねが要求される治療法です。
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食道静脈瘤の治療 イラスト
このスライドは、内視鏡的静脈瘤硬化療法の状態をイラストにしたものです。胃カメラにバルーンをつけて、食道の中でふくらませて、血流をせき止めて静脈瘤に薬を注入した際に逃げないようにしています。

薬液は胃カメラの先からでる針を静脈瘤に穿刺して、注入します。1回の治療に要する時間は15分から30分程度です。
術後、食べ物や水が使える感じや、しみていたい感じ、ギューって収縮するような痛みがでることがあります、熱が出る方もいます。3日くらいでだいたい収まってきますが、その間の食事は、突っかからないようなものを中心に用意するようにしています。
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食道静脈瘤 内視鏡的静脈瘤硬化療法 EIS
この写真は実際に、食道静脈瘤に硬化剤を注入しているときのものです。左の写真の左側にチューブのように見えるのが胃カメラから出た注射の針です。この中を薬が通って静脈瘤へ注入されます。注入された静脈が青くなっているのですが、これは、私たちの流派のやりかたで、青い色を薬液につけることでどの範囲に薬が入ったかが非常にわかりやすくなり、効果的な工夫です。意外とこの工夫がされていない施設が多いです。

右の写真は、血管造影の機械で放射線透視を行い、薬液の入った血管の範囲がお腹の中のどの辺までなのかを把握しながら、危険な血管などへの注入を予防したり、効果の出る血管の範囲を予想して治療を繰り返します。

この治療は、出来上がった静脈瘤であれば4回前後で私たちの経験では終了します。週一回ペースで順調に行えれば、1カ月半くらいで治療が終了します。
一回あたりの治療時間は15分から30分くらいです。これは、上達度でかなり違います。
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食道静脈瘤の内視鏡的治療 注入時ムービー
このムービーは食道静脈瘤に薬液を注入するときのものです。胃カメラで静脈瘤を確認して胃カメラの先端から細い針を出して、その針を静脈瘤に刺し、血管内に入っていることを確認後薬液を注入します。この手順を何回か繰り返してその日の治療が終了します。
私たちは、血管内の注入状況が把握しやすいように薬に青い色をつけて、静脈瘤ないの薬の入った範囲を把握するようにしています。ちょっとした手間ですが非常にわかりやすく治療効果をあげていると言えます。
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食道静脈瘤治療 結紮術 EVL
食道静脈瘤の治療の一つに結紮術(けっさつじゅつ)、EVLというのがあります。
これは、胃カメラの先端に小さい輪ゴムをつけておいて、静脈瘤を吸い込んでその根本に輪ゴムをかけるというシンプルなものです。手技としては非常に簡単で、研修医でもすぐ習得できるのですが、不十分な治療になると容易に再発し、その後の治療がしにくくなるという欠点があります。ですから、適応をしっかりと理解して、十分な治療ができるように心がけます。

静脈瘤破裂時の止血、肝臓の予備能が低下している場合、静脈瘤を作る血管が1本となっている場合にも効果的です。

この治療は、静脈瘤を短期間で消失させることが可能で治療期間も3週間以内で終了することがあります。その分、再発には、注意が必要です。
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食道静脈瘤破裂のEVL(結紮術)による止血ムービー
3秒くらいで上の方からしたへ向かって出血が見えます。これが、静脈瘤の出血です。いろんなパターンの出血形式がありますがこの例のように噴出性に出る場合、胃カメラの視野がとらえにくく治療に難渋することもありましたが、EVLによる止血が可能となり、出血源より向こう側に入れて引き抜いてくることで出血点が探せる場合もあり、便利な方法です。ムービーでは15秒くらいのところで再度出血点を確認プラスチックのチュー部内に静脈瘤を吸い込んで輪ゴムでしばっているます。黒いわっこになってるのが輪ゴムですがわかりますかね?

現在は、連発式となって輪ゴムが最初からいくつもついている状態でさらに便利になっています。
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食道静脈瘤の治療戦略
食道静脈瘤は、現在、私たちの経験では、血管内注入療法(EIS)が再発が少なく、適応の範囲が広い治療ですが、静脈瘤を作る血管が単純な場合などは輪ゴムでしばるEVLを選択します。この治療を週に一回から2週に一回行い、1カ月ほど繰り返すとほぼ太い血管は消失します。その後、食道粘膜内の細かい血管をヒートプローブで焼灼(地固めということが多い)して再発がしにくい形にしています。

その後細かい血管がそれでも再発する場合があるので、その際は再度焼灼術を追加して治療しています。地固めをすることによって再発の静脈瘤が小さくなって治療の回数が減ったことは、大変有用でした。
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食道静脈瘤の治療戦略経過
静脈瘤の治療が終わったあと、再発する場合があります。これは、1カ月後、3ヶ月後、半年後と経過を見ていき、小さいうちに治療をすることで、短期間の入院で済むようになってきます。しっかり再発が出来上がるまで待ってしまうと入院期間が長くなってしまうので、早めはやめにチェックして、早期に治療を受けることが望ましいです。

もちろん治療を一度していると再発形式も小さい状態なので最初の入院よりは短く済む場合がほとんどでヒートプローブ(HPU-ST)地固め療法だけで済む場合は7日前後で済んでしまいます。

私たちの経験では、早ければ1度の治療で再発はなくなりますし、長くても、3年間くらい頑張って治療するとほとんどでることが無くなります。
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胃静脈瘤の治療 B-RTO
胃静脈瘤の治療の中でも、孤立性胃穹窿部静脈瘤という静脈瘤に対しては、B-RTOという治療が大変有効です。
孤立性の胃穹窿部静脈瘤というのは、胃静脈瘤は食道静脈瘤とつながって発生することが多いのですが、それが、血流の関連から少し離れたところに発生していて、その血流が脾臓から副腎静脈への途中にあることに着目して開発された治療です。現在は何通かの血流に合わせて治療にはいる血管がわかれますが、最も多い治療に使用する血管は副腎静脈です。

この治療は、1991年当時、勤医協の中央病院の肝臓内科の金川 博史先生が開発した治療です。北海道発信の治療法で、大変有効性が高くいまも進歩が続いています。この治療が開発される以前は、胃静脈瘤の大量出血で命に関わっていた患者さんが多かったのですが、B-RTOにより、予防的に出血前に治療することが出来るようになり、患者さんもたくさん救われるようになりました。また、B-RTO以前は、胃カメラによる2から3回の治療が必要でこれもまた、患者さんにとって楽な治療法が開発されたことになり喜ばれました。しかし、すべての場合に出来るわけではなく、合併症もありますので、治療の際には必ず主治医に話を聞きましょう。

スライドは左が治療前、中央の写真が治療時、右が治療後です。
上が食道、下が胃で、下の胃のところに出っ張っている静脈瘤が、治療後は無くなっていることがわかります。

最近はB-RTOのみで完了しない場合は、早めに胃カメラによる治療を追加することも検討しています。
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胃静脈瘤のB-RTO ムービー
このムービーはB-RTOの際に、あらかじめ撮影をしたものです28秒くらいのところで、門脈への血流が見えるのですが、副腎静脈から胃静脈瘤を通って門脈へ造影剤が逆流して撮影しているものです、普段はこの逆に流れています。
B-RTOでは、静脈の血流の下流側に風船でつっぺをするため造影剤が逆流するのでこの撮影法が可能となり、最終的には静脈瘤の部分に硬化剤という薬を入れて治療をして終了します。
硬化剤の停留が非常によい場合はほぼ100%の治療効果が得られ、胃静脈瘤が消失することになります。B-RTOが開発される前には、こういった静脈瘤には内視鏡的に薬を注入するか、外科的に治療をするしかなかった時代でした。
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B-RTO前後 肝性脳症や肝不全の改善も
B-RTOは胃静脈瘤の治療として当初開発されました。しかし、門脈の血流が肝臓を通らすに下大静脈へと流れるシャントを減少させる効果もあり、脳症が起こりやすくしていたアンモニアが通る道筋をブロックすることで肝性脳症が改善するという、メリットも確認され、現在は治療に生かされています。

このスライドは、B-RTO前に脳症がアミノレバンの点滴をしてもなかなかとりきれなかった患者さんが、B-RTO後、アミノレバンの点滴も不要となり、元気となったときのアンモニア値の経過です。この方は門脈の血流も良くなり、ICG値も改善してとてもいい結果になった方でした。

B-RTO後、ICGは全体のB-RTO患者さんのデータで見たときには5年分くらい改善していることがわかっています。
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部分的脾動脈塞栓術
門脈圧が上がった状態を改善する治療の一つに部分的脾動脈塞栓術があります。もちろん、外科的に脾臓を摘出することも同じ効果をもたらすのですが、肝臓の状態が手術的に負担をかけることが望ましくない場合など、外科や麻酔科が手術を選択できない場合がまだまだ多く、内科的に行える、この治療が必要となります。

発熱や痛みなどの副作用が10年前は強かったため、内科でも、この治療はしない方がいいのではと言われてきましたが、最近では、塞栓の詰め物の入れ方が色々と検討され、副作用がコントロールしやすくなったことで、行う医療機関が増えてきました。しかし、まだまだ、術者でのばらつきがあり、手技としての完成が期待される分野でもあります。

私の経験からは、門脈圧を下げることで静脈瘤が改善したり、血小板が増えることでインターフェロン療法が可能となったりと大変患者さんに望ましい効果がでています。
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部分的脾動脈塞栓術の効果と今後の検討
部分的脾動脈塞栓術での効果は、脾臓摘出と同じような効果があります。肝臓の機能を改善する効果があり、肝臓に関連する治療の中では、珍しいくらいいい方向に期待できる治療です。しかし、発熱や痛み、門脈血栓などのつらい副作用が有ることがありますので、必ず主治医と相談しつつ行う治療です。

今後の検討として、脾臓の機能の解明やより安全な手技の開発という部分があります。まだまだ未知の部分もあり、これからもっともっと改善が期待される手技でもあるかなと思います。
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部分的脾動脈塞栓術の脾臓ムービー
部分的脾動脈塞栓術のあと、脾臓を3Dにした映像です。上側の薄い灰色の部分が血流が無くなった脾臓の部分で、下側の赤茶色の部分が残った脾臓の部分です。これは1例で、いろいろなパターンの血流の落ち方がありますが、この位詰めることで効果が出てくると言われています。
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